協定前文
 
 平成7年1月の阪神・淡路大地震では、電話をはじめとする既存の通信網が壊滅的な打撃をうけ、復旧までに長い時間を要した中で、救援活動において多くのアマチュア無線家が活躍した。特筆すべきは、近畿電気通信監理局が業界団体から提供されたアマチュア無線機とボランティアのアマチュア無線技士に対して超法規措置をとってコールサインを付与したこと、非常通信が3カ月の長期間にわたり行われたことである。
 この事実は、日頃よりアマチュア無線を楽しむ者にとっては、趣味としての無線の資格と技術、その持てる力の災害時における活用を促すきっかけであるとともに、金谷町当局にとっても災害時の情報伝達の盲点についての研究課題を投げ掛けることとなった。
 近い将来発生が心配される東海大地震等の大災害においては、災害に強い地域づくりを目指している静岡県においても電話をはじめとする巨大なシステムについてかなりの被害が想定され、復旧に費やす日数も相当なものになるとされている。
 一方、地域においては、自主防災活動などの高まりにより、個人としてのアマチュア無線家とその機器においてはかなりの率で生存が期待できる。これらにより行われる無線交信は、地域の情報伝達には十分なエリアが確保できるほか、通常の無線交信を通じて蓄えられた情報の伝達に関する能力が十分発揮できるものと認識されている。
 金谷ハムクラブは、従前より通常のアマチュア無線活動において、町内に設置されているレピーター管理団体の主体として、また、金谷ちゃまつりにおける全国との交信により技術力の蓄積や情報発信等に努め、これらにより地域への奉仕精神の醸成に勤めてきた団体である。
 金谷町としては地域の自主防災組織への支援を通じて安全で災害に強い地域づくりを進める中で、地域住民の内の専門技術を持った者からの協力はおおいに歓迎するものである。
 ここに、金谷ハムクラブにおいては日頃の活動により獲得した通信ノウハウの活用を自覚し、金谷町においては住民の防災意識の高揚の一環として、当該専門家としての能力に期待し、アマチュア無線による非常通信業務等に関する協定を締結する。
 
 
    アマチュア無線による
        非常通信業務等に関する協定
 
 金谷町と金谷ハムクラブ(呼出符号JR2YIS)はアマチュア無線による電波法第52条4項、6項の通信業務に関し、以下のとおり協定を締結する。
 
(目的)
第1条 この協定は、東海地震その他の大規模な災害が静岡県内及び金谷町に近接する地域において発生し、または発生する恐れのある場合に、金谷ハムクラブ(以下金谷HCという)が非常通信等を行ない金谷町に協力するために必要な事項を定める。
 
(通信業務の内容)
第2条 金谷HCが行なう非常通信等は、電波法及びこの法律に基づいた命令及び社団法人日本アマチュア無線連盟が制定したJARLの非常通信に関する規定に従うものとする。
 
(指定職員)
第3条 金谷町は町職員で指定する者(以下指定職員という)を、金谷HCの非常通信業務等の相手方とする。
2 指定職員はお茶の郷ハムクラブ(呼出符号JI2ZAC)の構成員またはアマチュア無線局の免許人でなければならない。
 
(協定の失効)
第4条 この協定は2年毎に更新することとし、どちらか一方が継続の意志を示さない時は失効する。
 
(協議)
第5条 この協定の実施に関し必要な事項は金谷町と金谷HCが協議の上、別に定める。
 
附則
(施行期日等)
この協定は平成 9年 1月 1日より施行する。
 
 平成 8年12月 2日
         
              静岡県榛原郡金谷町金谷河原3400
               金谷町長  
 
 
              静岡県榛原郡金谷町牛尾479−4
               金谷ハムクラブ JR2YIS
               会長    
 
 
 
 
 
    アマチュア無線による
      非常通信業務等に関する協定細則
 
(目的・根拠)
第1条 アマチュア無線による非常通信業務等に関する協定(以下、協定という)の実効をあげるため、協定第5条の規定に基づき以下のとおり定める。
 
(体制の確保)
第2条 金谷町と金谷HCは非常時の円滑な実施の確保ために、体制を別表1のとおり整備する。
 
2 金谷町は、各年度において防災担当係および指定職員の名簿を作成し、金谷HCに提供する。
金谷HCは、各年度において防災担当者を定め、会員名簿を添えて金谷町へ通知する。
各担当者の会合を適宜に開催する。
 
(周波数、電波型式)
第3条 非常通信等は以下の周波数、電波型式を使用して行うこととする。
 145.28Mhz F3   連絡用
 431.40Mhz F2   パケット通信用 
 433.28Mhz F3   連絡用
1292.72Mhz F3 F5 連絡およびSSTV用・金谷レピータ(JP2YFB)
 
(通信の確保)
第4条 金谷町と金谷HCは通信の確保のため関係の機関、団体および個人へ周知と協力の依頼を行わなければならない。
 
(様式)
第5条 通信の正確を期すため通信文、パケット文書の様式を別紙2のとおり定める。
 
(変更)
第6条 この協定の実行に支障が発生した時は、金谷町と金谷HCは遅滞なく対処し、協定の実効を確保しなければならない。
 
附則
この細則は平成 9年 1月 1日より施行する。